世界を救うユーグレナ -書評- 僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。
株価がグイーンと上がっている東大発のバイオベンチャー「ユーグレナ」社。
成毛眞さんやホリエモンが本やメルマガで取り上げているので気になってたんですが、社長が書いた本がKindleセールで売られていたので買ってみました(いまは通常価格)。
このミドリムシとやらが世界を救うというお話+リーダーであることにコンプレックスを持ってる社長がいかにして「社長」らしくなるのかというお話。
ミドリムシとは?
植物と動物の間の生き物で、藻の一種でもあるミドリムシは、植物と動物の栄養素の両方を作ることができる。その数は、なんと59種類に及ぶ。
No.39
動くのに植物のように光合成もできてしまうミドリムシ(学名:ユーグレナ)。何がスゴイかというと、
・栄養素が大量なので世界的な栄養不足を改善
・葉緑体をもってるので、光合成でCO2の削減ができる(しかも超効率がいい)
・体からバイオ燃料を取り出せて飛行機も飛ばせる
・場所をとらずに大量生産ができる
など。
ユーグレナ社の何がすごいかというと、これまでどれだけ頑張ってもスプーン1杯くらいのミドリムシしか生産できなかったものを大量生産できるようにしたこと。それによってホントに人類を救えちゃう可能性がでてきたわけです。
ベンチャー企業「ユーグレナ」の苦悩が見える
そのミドリムシの可能性も結構触れられてはいるのですが、この本のメインは社長の「苦悩」。
もしもその確実な道を選択することが本当に正しいならば、世の中にはもっとたくさんのイノベーションが生まれているはずだ。
現実がそうなっていないということは、イノベーションを起こす人間には、何かしら渡らなければならない川があるのではないか。ロジックではうまく説明できないのだが、いまでもそう思っている。
No.870
出雲社長は「会社を辞めるのは自分で稼ぐにはきちんと準備をしてからがいい」と思って、ミドリムシビジネスを35歳になってからと決めていたそうですが、それを10年前倒しして始めました。
もしこの決断がなかったら、「ミドリムシが世界を救う」可能性は一生訪れなかったかもしれないと思うとすごいことです。
が、こんな決断はなかなかできるもんじゃぁないです。
そして起業してからも苦悩の連続が。
年が明けた、1月16日。 六本木ヒルズのライブドアオフィスに、東京地検特捜部の強制捜査が入った。 その日、僕は大阪に出張していて、帰ってきたばかりだった。オフィスに入ろうとすると、ライブドアの受付のところで捜査員の一人に「もう入れないよ」と押しとどめられた。
No.1483
当時ライブドアのオフィスの間借りをして活動していたユーグレナ社にあのライブドアショックが訪れます。
そのときの出雲社長の決断の場面がかなーり手に汗握る展開になっていました。起業のイメージがただただ壮絶な感じになります。実際ベンチャーはこういう状況になることが多いのでしょうね…
さいごに
どんなにいいものでも、簡単に上手くいかないこの世の中の厳しさがビシビシ伝わってくる一冊でした。
サイバーエージェントの藤田社長の起業記もそうだったんですが、ベンチャーが上手く軌道に乗るまでの話はかなりおもしろいです。
ミドリムシが世界を救う日が楽しみです。
目次(Amazon.co.jpより)
はじめに くだらないものなんて、ない。
第1章 問題と、自らの無知を知るということ
人生を変えたバングラデシュでの1か月
典型的なニュータウン・ファミリー
『こち亀』とザリガニ
進学校の2つのカラー
「思いついたことを形にする」が許される環境で
リーダーには向いていない?
最高の友人と、めばえたコンプレックス
何不自由ない自分と、世界とのギャップ
コメが取れる国に乾パンはいるのか?──本当の問題を知る
グラミン銀行でのインターンシップで見たもの
「お互いさま、おかげさま」──リーダーは信頼をためてこそ
スタンフォードからやってきた道場破り
「西海岸」のライフスタイルに衝撃
ヤフーで見た、未来の会社の姿
本物の天才、鈴木との出会い──ノーベル経済学賞の理論を使いこなす
「国連」から「栄養素普及ビジネス」のため、農学部へ
「新鮮なリンゴを新鮮なまま届ける」ことの難しさ
テクノロジーだけでは、世界は変わらない第2章 出会いと、最初の一歩を踏み出すということ
仙豆を求めて
ミドリムシとの運命的な出会い
近藤論文の衝撃──ミドリムシはなぜ地球を救えるのか?
すべては「培養できたら」──頓挫した「ニューサンシャイン計画」
月産耳かき1杯──そもそもミドリムシの培養はなぜ難しいのか?
5億年前から地球を支えてきたミドリムシ
「35歳で、ミドリムシとともに立つ」第3章 起業と、チャンスを逃さずに迷いを振り切るということ
東京三菱銀行に就職──克服できない弱さ
銀行員時代に学んだ大切なこと
もう一人の「父親」──後悔しない道とは何か
新横浜で途中下車──本気で挑戦するためにリスクを取る
克服できない「弱さ」と丁稚奉公の日々
突如ひらめいたアイデア「カバン持ち」
ドリームゲートプロジェクトで知った、起業家の本音
社長のタイプ──世代ごとに信念を支えるものは違う
誰とも違う起業家、堀江さんとの出会い
相次ぐ異常気象と、地球温暖化問題への関心の高まり
「巨神兵」のイメージを振り払って──後戻りのできない決断
ニューサンシャイン計画がもたらしたもの
中野先生の心意気
立ちふさがる新たなる壁「培養プール問題」第4章 テクノロジーと、それを継承するということ
仮想ライバル「クロレラの御曹司」福本との出会い
千載一遇のチャンス到来
プールを求めて──八重山殖産の偉大なる決断
3人めの仲間──自分とはまったく違うからこそ、絶対に巻き込みたい
株式会社ユーグレナ、誕生──最初の一歩は六本木ヒルズから
ミドリムシ培養の難しさに直面──防ぎきれない汚染
カギは「蚊取り線香」──ついに大量培養に成功
すべての先人に感謝を──技術を継承するということ
NASAの権威、アイザック先生にもらった「宝物」第5章 試練と、伝える努力でそれを乗り越えるということ
2005年12月16日──最高の年末
2006年1月16日──強制捜査
吹き荒れる逆風──理不尽な拒絶に立ち尽くす
銀行での決意──ミドリムシが誤解されたままでは
一からの出直し、そしてさらなる拒絶
科学的に正しいことと、感情的な拒絶のはざまで
売れないサプリメント
あとは、伝えるだけ──がむしゃらな日々で学んだこと
成毛眞さんから受けた心強い支援
いつもカバンに入っている、1枚のファックス
変化の予感──心理的なハードルを打ち壊した『不都合な真実』
迫り来る資金ショート──ユーグレナの危機
我慢ばかりさせてしまった仲間への想い
伊藤忠との出会い──危機から救ってくれたアツい商社マン
2年、僕にくれませんか?──福本のがんばり
初めて「?」を外してくれたパートナー、伊藤忠商事
あらゆる人に、あらゆる手段で営業すること第6章 未来と、ハイブリッドであるということ
アルジバイオマスサミットで味わった屈辱と、新たな出会い
ハイブリッドなミドリムシ燃料が持つポテンシャル
「隠れプロジェクト」、始まる
JX日鉱日石からベンチャーへ──男気あふれる決断
次々と広がっていった燃料ビジネスのネットワーク
伝え続けた想いが、報われた瞬間
最初にリスクをとってくれた人々への感謝
上場と、仲間たちへの想い
本物の「トロフィー」を手にして
極端すぎる日本
未来型農業「ユーグレナファーム」とは?
ミドリムシでジェット機を飛ばす
2013年。いよいよ、バングラデシュへ
「科学的に正しいこと」と「心情的な共感」──ハイブリッドの大切さ
ベンチャーマインドとは、自ら定めた領域で「1番」になることおわりに──ミドリムシに教えてもらった、大切なこと
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