目的を持たない人に成功なんてありえない -書評- リーダーの値打ち 日本ではなぜバカだけが出世するのか?
只の組織批判本と思うなかれ。
「組織」における「自分」を理解するにはうってつけの本でした。この本がセールになっていることを心から感謝したいと思います。
今回も前回同様ブロガーの方の本です。こちらは「やまもといちろうブログ」を運営する、やまもといちろうさんの本です。
戦争は続いている
日露戦争という勝利体験を根幹として日本の組織が作り上げられたことを意味し、確かに列強の一角として我が国が世界の一流国入りしようという強い意志と自信を持つきっかけにはなりました。これは同様に、戦後日本の驚異的な復興と経済成長で、アジアの奇跡と言われた強烈な成功体験があるがゆえに、そこから社会的、政治的、産業的に脱却ができない現状と類似しています。
No.63
成功は清々しいものです。「なかなかやるじゃん」と自分に自信を付けるためには成功体験が必須だと思います。
約10年前、中3の運動会の騎馬戦でほとんどすべての騎馬から帽子を奪って青組を優勝に導いた程度の成功体験でさえ未だ忘れられないのですから、かつての「日本を成長させた」という体験は想像以上の自信になると思います。
ですが、その成功体験が邪魔をして上手く身動きができなくなっているのが今の日本であると山本さんは言います。
「今の社会は戦時と変わらない」と証明されるメッセージが強烈でした。
というよりも、ステージは変われど、今でも戦争は続いているのです。
現代でも、無謀な経営計画や曖昧な事業戦略が現場の状況と乖離した結果、無理なノルマや売上目標が現場の部門に押し付けられ、無理な勤務体制を強いることで優秀な社員から離職してしまったり、ブラック企業として問題を糾弾されたりすることになります
No.87
それを「仕方ない」と、何も考えずに諦めてる現状を見るに、人間の本質は変わっていないんだなぁと感じました。
今まで「愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」というのはちょっと違うと思っていましたが、「形を変えて同じ事が起こる」というのなら、まさに歴史から学ぶことこそが重要なんじゃないかと思うようになりました。
目的と理念が一番重要
私は誰であって、何を為すのか。それを為すために、何が必要なのか。私事も仕事もすべての要諦はここにあって、私たちが直面している「何か上手くいかない」原因はこの流れが滞っているので、非効率が温存されてなかなか頑張りが結果に結び付かないという問題になっているということなのです。
No.325
本書は「目的・理念が最も重要だ」ということをメインテーマにしています。
このテーマに関する主張がものすごく面白く、Kindleがハイライト(付箋)だらけになりました。「目的を持つことが重要」とはいうものの、それがどんな影響をおよぼすのか?という疑問の答えがとっても面白く書かれています。
この組織がどこへ向かっているのか明示的に示されることが、構成員のやる気を引き出し、組織の目的を満たすために自己研鑽を厭わないような積極的な行動を取ることは研究からも分かっており、実際の企業経営においても経営理念の重視はよく謳われます。
No.408〜410
経営理念が社員に浸透している企業ほど、顧客満足が高いだけでなく、従業員満足も高いことがわかっているそうです。
確かに、どこに向かって走ったらいいのかわからないまま一生走り続けられる人はいないわけで、それに気づかず走り続けた結果が「頑張ってるのに報われない」現象に繋がってくるんだと思います。
定時になっても誰一人会社を出ずにのんびりと仕事をしている会社なんかも、自分が「どんな目的を果たせば」業務が終了するのかわからないから、結局「社員の顔を伺う」という全然生産的じゃない感じになるわけです。
うん、とってもこの辺は耳が痛い。
将来どうなっていたいのかという「目的と理念」が重要
問題の捉え方と、優先順位のセッティングを間違っているだけで、いったん社会や組織の目標さえ決まってしまえば、あっという間に解決させられるだけの潜在力は秘めています。
No.1469
企業に目的や理念が大切なのは上記の通りなのですが、個人においても「目的や理念を持つ」ということはかなり大切だと思います。
自分がどうなっていたいか、どういうことを大切にしているのか、ということを知っておくことが大切で、それを知らずに走り続けても組織同様、上手くはいかないということです。
目的を持った結果、何をすべきかがわかって起こす行動こそが「ムダにならない」努力だということだとこの本から感じました。
自分の考える正しさと、誰かの考える正しさとが矛盾するときほど、それを戦わせ、納得してもらうための努力を如何に適切に、手間を惜しまず行っていくのかが大事なことなのだろうと思います
No.1622
ネットを見ていると、変わった人に向けられる批判をものすごく頻繁に目の当たりにします。
こういう批判を受けても曲げない人はホントすごいなぁと思っているのですが、もしかしたらそういう人たちは普通の人には比べ物にならないくらいの目的や理念を持っているんじゃないかとも思うようになりました。
自分に「芯」を持っている人は強いなぁ、と妙に納得してしまいました。
さいごに
本書を一言でまとめると、「自分がどうありたいか。話はそれからだ」だということは疑いの余地がありません。
それをもう四方八方から説得されてしまった気分。やっぱりすげーブロガーの話はすげー面白かったです。
Kindle版だと2012年1月24日まで紙の本の55%OFFの350円で買えるので、興味のある方は是非。
目次(Amazon.co.jpより)
はじめに
敗戦の研究が示す日本型組織の機能不全/日本型組織はなぜ必ず失敗するのか?/問題が問題のままで放置される理由第1章 なぜ、こんなに頑張っているのに楽にならないのか?
ここから、どこへ向かうのか? 自分を整理するコツ/五年後の「こうでありたい自分」のために努力する/なぜ、楽にならないのか? 幸せでないのか? etc.第2章 日本には、なぜビジョンを語らないリーダーばかり生まれるのか?
そもそも、なぜリーダーにビジョンが必要か?/組織にリーダーが必要である理由/なぜ会社は無能な人で埋め尽くされるのか?――「ピーターの法則」より/問われる「有事対応」の能力 etc.第3章 駄目な人がトップに祭り上げられるメカニズム
十人を率いるノウハウと千人を束ねるノウハウは違う/組織とは、だんだん駄目な人をトップに置くようになってしまう宿命/前任者の否定ができない日本 etc.第4章 繰り返される日本史という時間軸と日本社会のグローバル化という空間軸
高度成長で確立した日本独自のスタイル/制度疲労を起こした繁栄のためのシステム/政策とは取捨選択の結果として行われる etc.第5章 マネジメント能力のアジャストと成長セクターのジレンマ
アニメバブルが生み出した矛盾/日本のコンテンツ開発はなぜ世界で埋没してしまったか/コンテンツ制作でも時代遅れになる日本型組織 etc.第6章 理想のトップは「育成」できるのか
人を率いた経験も、率い方を学んだこともない人が英雄待望論を語る/頑張り努力すれば戦局はいつか打開できるという勝算なき突撃/なぜ日本の組織はイノベーションを生み出せないのか? etc.あとがき リーダーシップとは正しさを人に説得すること/昨日よりも良い明日のために
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